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名古屋地方裁判所 昭和57年(わ)2204号 判決

本籍

愛知県江南市赤童子町御宿五八番地の三

住居

右同所

新聞販売業

吉田尚武

昭和九年九月二四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官北岡英男出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一、八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、肩書居住地において、中日新聞古知野専売所の名称で新聞販売業を営むかたわら、愛知県江南市古知野本郷一一二番地において、尾北PRセンターの名称で、更に、昭和五六年一一月ころからは岐阜県美濃加茂市中富町一丁目一番において、中濃PRセンターの名称で、いずれも折込広告取次業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、新聞販売店の売上の一部を除外するなどし、かつ、折込広告取次店の事業収入については、水増経費を計上するとともに、累進課税を免れるため従業員二村輝也の名義で所得税申告をするなどの方法によりその所得の一部を秘匿した上、

第一  昭和五四年分の実際の所得金額は三、九三六万六、三一〇円であって、これに対する所得税額が一、七五〇万六、一〇〇円であるのに、同五五年三月四日、愛知県小牧市大字小牧一九五〇番地所在の小牧税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三九七万四、五一四円で、これに対する所得税額は二八万〇四〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一、七二二万五、七〇〇円を免れ、

第二  昭和五五年分の実際の所得金額は五、九八九万五、四七三円であって、これに対する所得税額が三、〇六五万〇七〇〇円であるのに、同五六年三月一六日、前記小牧税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三八七万八、九六三円で、これに対する所得税額は一七万一、二〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額三、〇四七万九、五〇〇円を免れ、

第三  昭和五六年分の実際の所得金額は五、一八四万七、九〇四円であって、これに対する所得税額が二、四九一万四、四〇〇円であるのに、同五七年三月一〇日、前記小牧税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三七五万四、五一三円で、これに対する所得税額は一九万九、一〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額二、四七一万五、三〇〇円を免れ、

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一〇通

一  被告人作成の上申書二通

一  鈴木清彦作成の証明書一〇通

一  山越洋司作成の査察官調査書三〇通

一  松野和雄作成の査察官調査書

一  吉田美代子及び吉田武久の検察官に対する各供述調書

一  二村輝也(二通)、吉田美代子(七通)、吉田武久(三通)及び飯田武の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  二村輝也、吉田美代子及び吉田武久(三通)作成の各上申書

(法令の適用)

被告人の判示第一及び第二の各所為は、いずれも昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条に、判示第三の所為は、所得税法二三八条にそれぞれ該当するが、情状によりいずれも懲役刑及び罰金刑を併科することとし、以上は刊法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により刑の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役一年及び罰金一、八〇〇万円に処し、被告人において右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文により被告人にこれを負担させることとする。

よっつ、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩瀬徹)

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